「親知らずを放置すると死亡することがある」という話を聞いて、不安になったことはありませんか。
親知らずそのものが、直接命に関わるわけではありませんが、まれに全身へ炎症が広がる可能性があります。
本記事では、親知らずを放置するリスクや重症化するケース、早めに歯科医院を受診した方がよい症状、抜歯が必要なケースについてわかりやすく解説します。

目次
親知らずを放置して死亡することはある?

親知らずの放置によって死亡に至るケースは極めてまれですが、感染症が重症化した場合には全身へ影響が及ぶ可能性があります。
ここでは、親知らずの感染が重症化した場合に考えられる影響について解説します。
親知らずが直接の原因で死亡することは極めてまれ
親知らず自体が、直接命を奪うわけではありません。
体力が低下している方や、基礎疾患をお持ちの方が適切な治療を受けずに放置した場合、深刻な事態を招く恐れがあります。
問題となるのは感染症の重症化
重要なのは「親知らずそのもの」が原因で命を落とすのではなく、そこから発生した細菌感染が全身に広がる点です。
口の中に存在する細菌が、顎の骨の隙間や血管を通じて全身へ侵入すると、制御が困難な感染症を引き起こす恐れがあります。
親知らずの周りで増殖した細菌が深部の組織へと侵入すると、顎骨周囲の炎症や「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という広範な急性炎症を引き起こし、全身へ影響を及ぼす可能性があります。
重症化すると全身へ炎症が広がることがある
首の筋肉の隙間を下方に伝った細菌が、心臓を包む膜の周囲である縦隔(じゅうかく)に達すると「縦隔炎」を引き起こします。
また、細菌が血液に乗って全身を巡ると、多臓器不全を招く「敗血症(はいせっしょう)」に至り、救命救急処置が必要な重篤な状態に至る可能性があります。
親知らずを放置すると起こる主なリスク

親知らずを放置すると、「いつか痛むかもしれない」という不安だけでなく、さまざまなトラブルにつながる可能性があります。
放置によって引き起こされる代表的な5つのリスクについて解説します。

親知らず周囲炎になる
親知らずの周辺にある歯ぐきや組織が、細菌感染によって慢性的な炎症を起こす病気を「親知らず周囲炎(智歯周囲炎)」と呼びます。
疲労やストレスで免疫力が低下したタイミングで急性化しやすく、顎が開きにくくなるなど、日常生活に支障をきたすことがあります。
歯ぐきの腫れや強い痛みが出る
炎症が進行すると、親知らず周辺の歯ぐきが赤く大きく腫れ上がり、強い痛みが生じます。
痛みのせいで食事が困難になるほか、夜間も睡眠が妨げられるなど、日常生活に支障をきたすことがあります。
口臭の原因になる
親知らずの周囲は、汚れが溜まりやすいです。
ブラッシングで除去しきれなかった食べかすが腐敗すると、さらに細菌がガスを産生して、独特の強い口臭を放つようになります。
虫歯や歯周病にかかりやすくなる
複雑な生え方をした親知らずと、その手前の歯の隙間は、歯ブラシの毛先が届きにくいです。
親知らずだけでなく隣の歯も、虫歯や歯周病にかかるリスクが高まります。
手前の歯まで失うリスクがある
親知らずが手前の第二大臼歯を強く押し潰すように生えている場合、手前の歯の根(歯根)が吸収されて溶けてしまうことがあります。
また、隙間にできた虫歯が神経まで達すると、親知らずを抜くだけでなく、手前の歯まで同時に失いかねません。
関連記事:親知らずが痛いときの対処法|今すぐできる応急処置と抜歯の判断基準
なぜ親知らずは感染しやすいのか

多くの歯の中で、なぜ親知らずだけがこれほどまでに感染症を引き起こしやすいのでしょうか。
その理由は、親知らずが持つ「位置」と「生え方」の特殊性にあります。
現代人の顎は進化の過程で小さくなっており、最後に生えてくる親知らずのための十分なスペースが残されていません。
その結果、トラブルが起きやすい環境が形成されます。
奥にあるため歯磨きが難しい
親知らずは、歯ブラシのヘッドが物理的に届きにくい場所にあります。
また、頬の粘膜や筋肉が邪魔をして、毛先を適切な角度で当てることが難しいです。
親知らずの存在を意識して磨いても、磨き残しが発生しやすい構造となっています。
半分だけ生えているケースが多い
スペース不足により、頭の一部だけを出して大部分が歯ぐきに埋まったままの親知らずが多く見られます。この中途半端な状態は、歯と歯ぐきの間にディープポケット(深い隙間)を作り出し、細菌が繁殖しやすい環境です。
食べかすや細菌がたまりやすい
半分埋まった歯ぐきの隙間や、手前の歯との間にできた段差には、毎日の食事の際に食べかすが詰まりやすいです。
この空間は、嫌気性菌(けんきせいきん)が繁殖しやすい環境 であり、プラークが急速に形成されます。
横向きや斜めに生えていることがある
完全にまっすぐ生えるスペースがない親知らずは、横を向いて隣の歯に衝突したり、斜めに傾いたりした状態で萌出(ほうしゅつ)します。
この複雑に入り組んだ立体構造は、日常のセルフケアだけでは清潔な状態を維持することが難しい場合があります。
親知らずの放置で重症化するケース

親知らずの炎症が進行し、周囲の組織に広がると重症化のサインが現れることがあります。
これらは感染が顎の骨の深部や、頚部の軟組織にまで波及しているサインです。
重症化の可能性を示す代表的な症状を解説します。
顔が大きく腫れる
炎症が歯槽骨(しそうこつ)を突き破って顔面の皮下組織にまで及ぶと、外見からでも一目でわかるほど頬や顎のラインが大きく腫れ上がります。
触ると熱感があり、カチカチに硬くなっている場合は、内部に感染が進行している可能性があります。
口が開きにくくなる
感染が顎を動かす筋肉(咀嚼筋)の周囲にまで波及すると、筋肉が炎症によって引きつりを起こします。
指が1本分も入らないほど口が開かなくなる「開口障害(かいこうしょうがい)」が発症し、食事はもちろん、歯科治療も困難になります。
飲み込みづらくなる
親知らずの腫れが喉の近く(咽頭側)に向かって進行すると、唾液や食べ物を飲み込む際に激しい痛みを伴うようになります。
これは炎症が喉の粘膜を圧迫しているサインであり、放置すると気道を塞いで呼吸困難に陥る可能性があります。
発熱や倦怠感が続く
口の中の炎症にとどまらず、細菌や毒素が全身へ流れると、38度以上の高熱や激しい全身の倦怠感(けんたいかん)を引き起こします。
市販の解熱鎮痛剤を服用しても熱が下がらない場合は、感染が進行している可能性があります。
顎や首まで腫れが広がる
腫れが首まで広がっている場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
首には心臓へとつながる重要な血管や組織の隙間が多数存在するため、膿が溜まるとリスクが高まります。
すぐに歯科医院を受診した方がよい症状

親知らずに違和感を覚えても、仕事や日々の忙しさから受診を先延ばしにしてしまう方は少なくありません。
以下に挙げる5つの症状のうち、1つでも該当するものがある場合は、早めに歯科医院を受診してください。

強い痛みや腫れがある
拍動性(ドクドクとする)の激しい痛みがあり、市販の鎮痛薬を服用しても全く効かない場合や、顔の左右のバランスが崩れるほど腫れている場合は歯科医院を受診しましょう。
発熱を伴う
歯の痛みと同時に38度以上の発熱や悪寒、全身の震えなどが見られる場合は、感染が局所にとどまらず全身に現れているサインです。
放置すると、敗血症などに移行するリスクがあります。
膿が出ている
親知らずの周辺の歯ぐきを押すと、ドロっとした黄色や緑色の膿(うみ)が溢れ出てきた場合は、歯科医院を受診してください。
持続的な排膿は、骨が溶け続けているサインでもあります。
飲み込みづらい・息苦しい
水を飲むだけでも喉に激痛が走り、うまく飲み込めない状態や、横になると息苦しさを感じる場合は、迷わず医療機関で診察してもらいましょう。
炎症による腫脹(しゅちょう)が、気道を圧迫し始めていると考えられます。
症状を繰り返している
「数ヶ月ごとに腫れては、自然に痛みが引く」というサイクルを繰り返している場合も、歯科医院を受診してください。
治ったのではなく、慢性期と急性期を行き来している可能性があります。
症状が繰り返す場合、症状が悪化する可能性があります。
親知らずは必ず抜歯しなければならない?

「親知らず=必ず抜くもの」というイメージが定着していますが、医学的にはすべての親知らずが抜歯の対象となるわけではありません。
重要なのは、その親知らずが現在、そして未来において「害を及ぼすか否か」という点です。
ここでは、抜歯が推奨される基準と、残しても問題がないケースの境界線について解説します。

抜歯が推奨されるケース
現在症状がある場合や、将来的に周囲の歯へ影響を及ぼす可能性がある場合は、抜歯が検討されます。
具体的には、以下の4つのケースが該当します。
- 横向きに生えている:手前の歯を押し続け、歯並びを悪化させたり歯根を溶かしたりする可能性があります。
- 炎症を繰り返している:慢性的な炎症が続いており、再発のリスクがあります。
- 虫歯になっている:生え方によっては治療が難しい場合があります。
- 手前の歯に悪影響がある:手前の第二大臼歯との間に深い歯周ポケットを形成し、第二大臼歯の寿命を縮める可能性があります。
抜歯しなくてもよいケース
親知らずが健全に機能し、衛生状態が保たれているのであれば、無理に抜く必要はありません。
将来的に別の歯を失った際の「移植用のドナー歯」として温存できるメリットもあります。
- まっすぐ生えている:上下の親知らずが本来の正しい位置に向かってまっすぐに萌出し、骨の中に適切に収まっている状態です。
- しっかり清掃できる:お口のケアが行き届いており、歯ブラシやタフトブラシを用いてプラーク(歯垢)を完全に除去できています。
- 噛み合わせに問題がない:上下の親知らずが適切に噛み合い、機能している状態です。
- 症状がない:過去に一度も痛みや腫れを起こしたことがなく、レントゲン検査でも周囲の骨や組織に異常が認められません。
定期的な検査が重要
現在は症状がなくても、親知らずの状態は年月とともに変化することがあります。
特に横向きに埋まっている親知らずや、歯ぐきの一部に覆われている親知らずは、自覚症状がなくても炎症やむし歯が進行している場合があります。
当院では、レントゲンやCTを用いて親知らずの状態を確認し、抜歯が必要かどうかを診断しています。気になる症状がある方は、一度ご相談ください。
関連記事:親知らずを抜いた後の痛みはいつまで?正常な経過と注意点を解説
親知らずの抜歯が不安な方へ

抜歯に対する「痛い」「怖い」という恐怖心から、受診をためらう方も少なくありません。
治療に伴うストレスを軽減するために、実際の現場で導入されている先進的な取り組みや体制についてご紹介します。
抜歯前にレントゲンやCTで状態を確認する
事前の診断では、2次元のレントゲンだけでなく、3次元的な構造を把握できる歯科用CTを活用して診断を行う歯科医院もあります。
これにより、親知らずの正確な根の形態や、すぐ近くを通る重要な神経(下歯槽神経)や血管との位置関係をミリ単位で把握できます。
痛みに配慮した治療が可能
手術中の痛みに関しては、麻酔技術の進化により、痛みに配慮した治療が可能です。
注射時の痛みは「表面麻酔」で緩和するクリニックも多く見られます。
また、恐怖心が大きい場合は、うたた寝しているようなリラックス状態で治療を受けられる「静脈内鎮静法」という選択肢もあります。
難しい症例は口腔外科で対応できる
顎の骨の奥深くに完全に埋まっているような難症例の場合、歯科クリニックでは治療が難しいこともあります。
外科手術を専門とする「口腔外科」であれば、抜歯が可能です。
当院では口腔外科にも対応しています。
まずは相談だけでも可能
歯科医院を訪れたからといって、その日のうちに強制的に抜歯されることはありません。
まずは現在のお口の状態を検査し、抜歯のメリット・デメリットについて詳しい説明を受けます。
まずは歯科医院で現在の状態について相談してみましょう。

まとめ|親知らずの放置は重症感染症のリスクがあるため早めの相談が大切
親知らずは、すべてが抜歯の対象になるわけではありません。
一方で、見た目では問題がなくても、レントゲンやCT検査によって炎症や虫歯が見つかるケースもあります。
ハミール東京デンタルオフィス小川町では、親知らずの状態を詳しく確認したうえで、抜歯の必要性や治療方法をご提案しています。
「抜いた方がよいのかわからない」「今は痛くないけれど気になる」という方も、お気軽にご相談ください。

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当院、医療法人歯科ハミールの分院も、今後共よろしくお願いいたします。