「食生活が変わった現代人に、なぜ親知らずが生えるのか」と疑問に感じる方は少なくありません。親知らずは「第三大臼歯」と呼ばれる永久歯の一つで、生活環境が変わった現代でも多くの人に形成されます。本記事では、親知らずが生える理由や仕組み、まっすぐ生えにくい背景、生えてきたときの対処法までをわかりやすく解説します。

目次
親知らずはなぜ生える?何のためにある歯?

親知らずは、突然新しい歯が作られて生えてくるわけではありません。
ほかの永久歯と同様に顎の骨の中で形成され、成長に伴って生えてくる第三大臼歯です。
まずは、親知らずがどのような歯なのか、なぜ現代人にも存在するのかを解説します。
親知らずとは?」
親知らずとは、歯列の一番奥に位置する「第三大臼歯」のことです。
前歯の中央から数えて8番目にあたる永久歯で、「智歯(ちし)」とも呼ばれます。
上下左右に1本ずつ、最大で4本存在する歯ですが、必ず4本すべてが生えるわけではありません。
本数には個人差があり、1本も持たない人もいます。
また、歯自体は形成されていても、顎の骨の中に埋まったまま口の中に現れないケースも見られます。
親知らずは昔の人にとって重要だった?
親知らずは、かつての人類にとって食べ物を噛み砕くために重要な歯だったと考えられています。
人類の祖先は、現代よりも硬く繊維質の多い食べ物を摂取し、食べ物をすり潰す奥歯が重要な役割を担っていたとされています。
つまり親知らずは、不要な歯ではなく、永久歯の一つである第三大臼歯として形成される歯です。
現代人にも親知らずが生える理由
生活環境が大きく変わった現代でも、親知らずは多くの人の顎の骨の中で形成されます。
食生活が変化したからといって、歯を作る仕組みそのものがすぐに失われるわけではないためです。
一方、第三大臼歯は退化傾向が強く、形態や萌出の仕方にも大きな個人差があります。
生まれつき形成されない場合や、形成されても骨の中に埋まったままの場合もあります。
4本すべてが形成される人もいれば、1本も形成されない人もおり、個人差が大きいことも親知らずの特徴です。
親知らずはなぜ大人になってから生える?

親知らずの特徴の一つが、ほかの永久歯より遅い時期に生えてくることです。
子どもの頃には見えていなくても、顎の骨の中では親知らずの形成が進んでいます。
ここでは、親知らずが形成されてから生えてくるまでの仕組みを解説します。
親知らずは顎の骨の中で徐々に形成される
親知らずは、ある日突然作られる歯ではありません。
ほかの永久歯と同じく、まず顎の骨の中に歯のもととなる「歯胚(しはい)」ができ、長い時間をかけて成長していきます。
歯冠(歯の頭の部分)は13〜15歳頃に形成が完了し、その後、歯根の形成が進みながら萌出していきます。
外から見えない段階であっても、レントゲン撮影を行えば親知らずの有無や向きを確認することが可能です。
親知らずが生える時期
親知らずは永久歯の中でも生える時期が遅く、10代後半から20代頃に萌出することが多い歯です。
ただし、生える時期には大きな個人差があります。なお、「親知らず」という名称は、親が子どもの歯の生え変わりを見守る時期を過ぎてから生えてくることに由来するという説があります。
親知らずがまっすぐ生えないのはなぜ?

親知らずは、ほかの永久歯と同じようにまっすぐ生えるとは限りません。
斜めや横向きになったり、一部分だけが歯ぐきから出たりするケースもあります。
生え方に個人差が生じる主な理由を見ていきましょう。
親知らずが生えるスペースが不足している
親知らずがまっすぐ生えにくい主な理由は、生えるためのスペースが十分に空いていないことです。
親知らずは永久歯の中で最後に生えるため、その時点で歯列の奥に十分な余地が残っていない場合があります。
スペースが足りないと、手前の第二大臼歯に引っかかるなどして正常に萌出できません。
ただし、顎が小さいからといって必ず横向きに生えるわけではありません。
生え方は歯の大きさや向き、骨の状態など複数の要素によって決まります。
斜め・横向き・一部だけ生える場合がある
親知らずの生え方は、大きく分けて次のようなパターンがあります。
- まっすぐ生える「垂直」
- 手前や奥に傾く「斜め(近心傾斜・遠心傾斜)」
- 真横を向いた「水平」
- 歯の一部だけが歯ぐきから出ている「半埋伏」
- 歯全体が骨や歯ぐきの中に埋まっている「完全埋伏」
これらは見た目だけでは判断できない場合があるため、必要に応じてレントゲンなどの画像検査で詳しく確認します。
| 生え方 | 状態 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 垂直 | まっすぐ生えている | 正常に萌出し、清掃できる場合は経過観察できることがある |
| 斜め | 手前や奥へ傾いている | 第二大臼歯との間に汚れがたまりやすい |
| 水平 | 横向きになっている | 骨の中に埋まった状態になることがある |
| 半埋伏 | 歯の一部だけが出ている | 歯ぐきとの隙間に汚れがたまりやすい |
| 完全埋伏 | 歯全体が骨や歯ぐきの中にある | 外からは見えず、画像検査で確認されることがある |
親知らずが生えてこない人もいる
親知らずが生えてこない場合、主に2つの理由が考えられます。
1つは、そもそも親知らずが形成されていない「先天欠如」です。
もう1つは、親知らずが存在していても顎の骨の中に埋まったままになっている「埋伏」の状態です。
どちらの場合も、生えてこないこと自体がただちに異常というわけではありません。
自分がどちらに当てはまるかは、レントゲン撮影で確認できます。
関連記事:親知らずが生えない人の特徴とは?原因・メリット・注意点を解説
親知らずが生えると起こりやすいトラブル

親知らずが生えたからといって、必ず問題が起こるわけではありません。
しかし、歯列の一番奥に位置するうえ、生え方によっては歯磨きが難しくなるため、口腔内のトラブルにつながることがあります。
主なトラブルは、以下のとおりです。
- 親知らず周辺の歯ぐきが痛む・腫れる
- 親知らずや隣の歯が虫歯になる
- 生えかけの状態が長く続く
順に見ていきましょう。
親知らず周辺の歯ぐきが痛む・腫れる
親知らずで起こりやすい代表的なトラブルが、周囲の歯ぐきの炎症です。
生えかけの親知らずは、歯と歯ぐきの間に隙間ができやすく、そこに汚れや細菌がたまります。
これが原因で起こる炎症を「智歯周囲炎」と呼びます。
主な症状は、歯ぐきの腫れや痛み、噛んだときの違和感などです。
炎症が広がると、口が開きにくくなることもあります。強い症状がある場合は、早めに歯科医院を受診してください。
親知らずや隣の歯が虫歯になる
親知らずは、生え方によっては虫歯のリスクが高くなることがあります。
歯列の最も奥にあるため歯ブラシが届きにくく、磨き残しが生じやすいことが理由です。
注意すべき点は、影響が親知らずだけにとどまらない可能性があることです。
斜めや半埋伏の状態では、手前の第二大臼歯との間に汚れがたまり、隣の歯まで虫歯になるおそれがあります。
親知らずだけでなく第二大臼歯にも影響が及ぶ可能性があるため、早期に状態を確認することが重要です。
生えかけの状態が長く続く
親知らずは、歯の一部だけが露出した「生えかけ」の状態が長期間続くことがあります。
スペース不足や生える向きの影響で、それ以上萌出できずに止まってしまうケースです。
この状態では歯ぐきが歯の一部を覆っているため、隙間に食べかすや細菌がたまりやすくなります。
その結果、智歯周囲炎や虫歯を繰り返す原因となることがあります。
生えかけの状態が気になる場合は、歯科医院で状態を確認してもらいましょう。
関連記事:親知らずが生えかけの状態とは?痛み・腫れの原因やいつまで続くのかを解説
生えてきた親知らずは抜いたほうがよい?

親知らずが生えてきても、必ず抜歯する必要があるとは限りません。
正常に生えていて問題なく管理できる場合には、保存できるケースもあります。
一方、痛みや炎症などを繰り返している場合には、抜歯を検討することがあります。
| 確認するポイント | 抜歯を検討するケース | 経過観察できるケース |
|---|---|---|
| 生え方 | 斜め・横向きなどで問題が生じている | まっすぐ生えている |
| 炎症 | 智歯周囲炎を繰り返している | 腫れや炎症がない |
| 虫歯 | 親知らずや隣の歯に虫歯がある | 虫歯がない |
| 清掃状態 | 歯ブラシが届きにくく、汚れがたまりやすい | 十分に清掃できる |
| 周囲への影響 | 第二大臼歯などに影響が生じている | 周囲の歯への悪影響が見られない |
| その他 | 嚢胞などが認められる | 特に病変が認められない |
抜歯を検討する主なケース
親知らずが周囲に悪影響を及ぼしている、またはその可能性が高い場合は、抜歯を検討します。
代表的なのは、智歯周囲炎を繰り返しているケースです。
親知らず自体が虫歯になっている場合や、隣接する第二大臼歯に虫歯や歯根吸収などの影響が生じている場合も、抜歯を検討することがあります。
清掃が難しく、将来的なトラブルが懸念されるケースも同様です。
また、親知らずの周囲に嚢胞(のうほう)が認められた場合にも抜歯が検討されます。
抜かずに経過観察できるケース
親知らずに問題がなければ、抜かずに経過観察を選択できる場合があります。
具体的には、まっすぐ生えていて、上下の親知らずが正常に噛み合っている状態です。
加えて、歯ブラシが十分に届き、清潔に保てることも条件となります。虫歯や炎症がなく、周囲の歯にも悪影響が見られなければ、抜歯せずに経過を観察できる場合があります。
「親知らず=抜歯」とは限らず、状態に応じた判断が必要です。
保存する場合も、定期的な検診で変化を確認していきましょう。
親知らずが生えてきたときの対処法

親知らずが生えてきても、痛みや腫れがない場合、必ずしもすぐに抜歯する必要はありません。
ただし、自分では親知らずの向きや顎の骨の中の状態まで確認できないため、気になる症状がある場合は歯科医院で診察を受けましょう。
痛みや腫れがある場合は歯科医院を受診する
親知らず周辺に痛みや腫れがある場合、炎症が強くなり腫れが頬や喉のほうまで広がることもあるため、放置せず歯科医院を受診してください。
市販の鎮痛薬で一時的に症状を抑えられても、原因そのものが解消されるわけではありません。
長期間にわたって市販薬だけで対処し続けることは避けましょう。
また、奥歯の痛みの原因が必ずしも親知らずとは限りません。正確な原因を知るためにも、歯科医師による診察が必要です。
レントゲンなどで親知らずの状態を確認する
親知らずの位置や向き、埋伏の程度などを確認する際には、必要に応じてレントゲンなどの画像検査を行います。
検査では、親知らずの有無や生えている方向、骨の中に埋まっている程度を確認します。
手前の第二大臼歯との位置関係も重要な確認項目です。
下顎の親知らずの場合は、近くを通る神経との位置関係を確認することもあります。
こうした情報をもとに、抜歯が必要か、経過観察でよいかを判断していきます。
親知らず周辺を清潔に保つ
親知らずのトラブルを防ぐためには、周辺を清潔に保つことが基本です。
奥まで届きやすいヘッドの小さい歯ブラシや、タフトブラシを活用すると清掃しやすくなります。
生えかけの部分は歯ぐきが傷つきやすいため、強くこすらず丁寧に磨くよう意識してください。
自分では落としきれない汚れもあるため、定期的な歯科検診やクリーニングを受けることも大切です。
定期的に状態を確認することで、異変の早期発見や早期対応につながります。
親知らずがなぜ生えるのかに関するよくある質問

親知らずについては、生える理由以外にも「全員に生えるのか」「何歳まで生える可能性があるのか」など、さまざまな疑問があります。
ここでは、親知らずが生える仕組みに関する代表的な疑問を解説します。
親知らずは全員に生えるのですか?
全員に生えるわけではありません。
親知らずがそもそも形成されていない「先天欠如」の人もいれば、存在していても骨の中に埋まったまま生えてこない人もいます。
本数も人によって異なり、4本すべてそろう人もいれば、1〜3本だけの人もいます。
自分に親知らずがあるかどうかは、レントゲン撮影で確認できます。
親知らずが4本すべて生える人もいますか?
はい、上下左右の親知らず4本すべてが形成され、口の中に生えてくる人もいます。
ただし、4本すべてが形成されていても、正常に萌出するとは限りません。
一部が斜めに生えていたり、半埋伏の状態だったりする場合もあります。
本数だけでなく、それぞれの生え方を確認することが大切です。
親知らずは何歳まで生える可能性がありますか?
明確な上限年齢を示すことは困難です。
生える時期には個人差があり、骨の中に埋まったまま年齢を重ねる人もいます。
気になる場合は、歯科医院で現在の状態を確認してください。
親知らずが生えないのは進化しているからですか?
単純に「進化しているから」とは言い切れません。
第三大臼歯は、ほかの歯と比べて先天欠如や形態の変異が多く、退化傾向を示す歯とされています。
ただし、親知らずの有無や本数には複数の要因が関わっています。
そのため、「親知らずがない人ほど進化している」と結論づけることはできません。
生えないことは、あくまで個人差の一つと捉えるのが適切です。
親知らずは将来的になくなるのでしょうか?
将来、人類から親知らずがなくなるかどうかは、現時点ではわかっていません。
第三大臼歯には退化傾向がみられるものの、将来的に人類からなくなると断定できる科学的根拠は現時点では十分ではありません。
現在も多くの人に親知らずが形成されている以上、自分の親知らずの状態を把握しておくことが重要です。
まとめ:親知らずがなぜ生えるのかを知り、気になる場合は状態を確認しよう
親知らずは、「第三大臼歯」と呼ばれる永久歯の一つです。
かつては硬い食べ物を噛み砕くために重要な歯だったと考えられており、食生活が変わった現代でも多くの人の顎の骨の中で形成されます。
一方で退化傾向が強く、本数や生える時期、生え方には大きな個人差があります。
親知らずが生えても、必ず抜歯が必要になるわけではありません。
ただし、斜めや半埋伏の状態では、智歯周囲炎や虫歯などのトラブルにつながることがあります。
痛みや腫れがある場合はもちろん、生え方が気になる場合は、ハミール東京デンタルオフィス小川町へご相談ください。
必要に応じてレントゲンなどで状態を確認し、親知らずの状態を正しく知り、適切なケアや判断につなげましょう。
